感染性胃腸炎の流行拡大中 ~ノロウイルス対策について

 

例年冬になると、感染性胃腸炎の流行が始まります。

下のグラフは、2018年第49週(12月3日~12月9日)までの感染性胃腸炎の報告数ですが、45週頃(11月中旬)から報告数が徐々に増加してきていることがわかります。

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この冬における感染性胃腸炎の流行の主な原因微生物が、「ノロウイルス」と言われています。

 

ノロウイルスとは?

胃腸炎の原因となる小型のウイルスで、食品などを介して口から体内に入ることにより感染します。

潜伏期は1~2日。

 

典型的な例としては、生のカキを食べた翌日~翌々日あたりから繰り返す嘔気・嘔吐、水様性下痢が始まります。発熱、腹痛がみられることもあります。

 

症状は2~3日以内に自然に治まることがほとんどですが、嘔気・嘔吐が激しく脱水症などを起こした場合は、点滴や入院が必要になることもあります。

 

しかし、生物も食べていない、周囲に同様の症状もいないなど、感染源が不明な場合も多くみられます。

 

 

診断

病院には検査キットがありますが、適応は以下に限られており

・3歳未満の小児

・65歳以上の高齢者

・がん、臓器移植後、免疫抑制治療中で免疫不全がある方

上記以外の方は保険を使った検査は受けられません(自費診療)。

 

多くは生カキの摂取や周囲に同様の症状の方がいるなどの状況、嘔吐・下痢などの症状から診断されます。

 

 

治療

ノロウイルスに特異的な治療(抗ウイルス薬など)はありません。

吐き気止め、点滴などの対症療法が行われます。

下痢に対して下痢止めは原則使いません。

下痢は有害なものを体外に排出しようとする身体の機能としての一面があるからです。

 

 

ノロウイルス対策

<感染対策>

・手洗い、食品の十分な加熱

・カキなど二枚貝の生食は避ける

・自宅外のトイレの蛇口の取手、ドアノブなどはなるべく素手で触らない

 

<二次感染対策~人にうつさない、うつされないために>

ノロウイルスでは、すでに胃腸炎を発症している人からの感染に注意が必要です。

ノロウイルスは感染力が強く、嘔吐物が乾燥して空気中に舞い上がったものを吸い込むだけでも感染すると言われています。

実際、嘔吐、下痢をしている家族のお世話などで感染するリスクが高く、家族内感染も多くみられます。

 

そこで重要なのが吐物、排泄物の処理の仕方です。

マスク、手袋は必須です

 

また、ノロウイルスはアルコール消毒には抵抗性を示すため、次亜塩素酸(じあえんそさん)による消毒を行います。

しかし、次亜塩素酸の消毒液は普通の家庭にはありませんので、「キッチンハイター」などを水で薄めて(希釈)代用します。

消毒液の作り方はこちらのサイトがわかりやすいです。

 広島市 - 消毒液の作り方と使用上の注意(次亜塩素酸ナトリウム)

 

 

最後に

ノロウイルス胃腸炎は短期間で自然に治り、元々健康な人がかかっても命にかかわることはほぼありません。しかし、嘔気・嘔吐症状が非常に強いので、かかるととてもつらい感染症です。

 

問題は、体力、免疫力に問題のある高齢者、小さな子ども、妊婦さんなどが感染してしまうと、入院が必要になったり、時には死に至ることもあることです。

 

我々医療従事者は、自分が感染して勤務先(医療機関や介護施設)で患者さんや入所者の方に感染を拡大させることは絶対に避ける必要があるのと、かかったときのきつさを身近に見ているため、生カキの摂取は避ける人が多いです。

 

これからお正月まで、美味しいものを食べる機会が多くなると思いますが、せっかくの年末年始に胃腸炎で苦しまなくていいように、手洗いなどのできる予防策は取っておきたいですね。

 

 

参考

ノロウイルスについてわかりやすくまとめられたサイトです

嘔吐物の処理方法の動画もあります

www.m-ipc.jp