(読書記)世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事 津川友介 東洋経済新報社
米国の大学病院で医師として働く著者による、科学的に根拠のある健康によい食事の解説です。
巷では、「〇〇したければ、△△だけを食べなさい」という様なタイトルの本がなぜか売れているようですが、ほぼインチキです。むしろ身体には害を及ぼしかねません。
「健康になりたければ、野菜、果物、魚を中心としたバランスのいい食事をしましょう」というのが正しいのですが、こんなタイトルの本はなかなか売れず、突飛なタイトルの本に惹かれてしまう人が多いのです。
本書の中心で、最も大事なこと
健康に良い食品
①魚
②野菜、果物(フルーツジュース、じゃがいもを除く)
③茶色い炭水化物
④オリーブオイル
⑤ナッツ類
健康に悪い食品
①赤い肉(牛肉、ブタ肉、特にハム、ソーセージなどの加工肉)
②白い炭水化物(白米、うどんなど)
③バターなどの飽和脂肪酸
(「体に良い、健康に良い」=がん、脳卒中、心筋梗塞などのリスクを下げることと定義)
ということが科学的にわかっています。
しかし、上記の健康に良い食品ばかりを摂って、健康に悪い食品を摂らないというのは現実的ではありません。
特に、日本人はまだまだお米が主食ですので、お米を食べない食生活というのは寂しい気もします。ただ、よっぽどスポーツや仕事で身体を動かす人以外は、白米は少なめが望ましいと思います。
牛肉や豚肉、バターなども現在の日本の食卓には欠かせないものです。
大事なのは、極端に何かを制限したり、逆に特定の食品ばかりを摂ったりすることではなく、
・牛肉・豚肉よりは魚、鶏肉
・野菜・果物を多めに
・白米・うどん・白いパンばかりよりも、玄米・そば・全粒粉のパン
・油はオリーブオイル
という、なるべく健康に良いことがわかっている食品の割合を多くして、バランスよく色々なものを食べるということではないでしょうか。
以下、私が重要だと思ったことのメモです
・食品が重要であり、成分はあまり重要ではない。
・緑黄色野菜が体に良いことはわかっているが、そこに含まれるβカロテンやリコピンなどの成分が体によいという根拠はない(βカロテンのサプリメントは肺癌のリスクを高めた)
・科学的根拠のある地中海食(N Engl J Med 2013; 368: 1279-1290)
・地中海食により脳卒中、心筋梗塞、乳がんが減少
・地中海食について解説されたページ(英語)
Make Each Day Mediterranean - Oldways
https://oldwayspt.org/system/files/atoms/files/NewMedKit_0.pdf
・野菜、果物摂取により、心筋梗塞、脳卒中はリスクが減る可能性が高いが、がんによる死亡は減らない
・糖尿病のリスクを下げる果物:ブルーベリー、ぶどう・レーズン、プルーン
・糖尿病のリスクを上げる果物:カンタロープメロン(赤肉種のマスクメロン)
(BMJ 2013; 347: f5001)
・オーガニック食材:一般の食材と比べて、栄養価は変わらない
・残留農薬を認める確率は低くなるが、健康被害には影響がないレベルと思われる
(Ann Intern Med 2012; 157: 348-366)
・魚の摂取量が多い人ほど
死亡するリスクが低い(Eur J Clin Nutr 2016; 70: 155-161)
心筋梗塞による死亡リスクが低い(JAMA 2006; 296: 1885-1899)
・茶色い炭水化物:玄米、全粒粉など。食物繊維、ビタミン類が除去されない。
・茶色い炭水化物を摂取する群は、ほとんど摂取しない群より死亡率が低く、心筋梗塞や脳卒中、糖尿病が少ない(Circulation 2016; 133: 2370-80、Nutr Metab Cardiovasc Dis 2008; 18: 283-290、PLos Med 2007; 4: e261)
・白米の摂取量が増えるほど、糖尿病に罹るリスクは上がる(Am J Clin Nutr 2010; 92: 1468-77)。ただし、1日1時間以上の筋肉労働やスポーツをする人は当てはまらない。
・WHOの組織、国際がん研究機関(IARC)が2015年10月に出した発表、「加工肉は発がん性があり、赤い肉はおそらく発がん性がある」
これらの摂取量が増えると、全死亡率、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患による死亡率、大腸がんのリスクが増加する。
・卵は「1週間に6個まで」
・卵をよく食べる群では、2型糖尿病発症リスク、心不全発症リスクが高い。特に、糖尿病患者に限った解析では、心筋梗塞や脳卒中による死亡リスクが高くなる。
・卵の殻の色、黄身の色と栄養は何の関係もなく、鶏が何を食べているかによる違い。
著者が勧める信頼できる健康情報の入手源
・厚生労働省
・国立がんセンター
・ハーバード公衆衛生大学院(https://www.hsph.harvard.edu/)
・メイヨークリニック(https://www.mayoclinic.org/)
・WebMD(https://www.webmd.com/)
・WHO、IARC、欧米の各学会ガイドライン、国立研究所のホームページなど
Amazonのページへはこちらから