睡眠時無呼吸症候群(SAS)~眠りの質は寿命をも左右する
SASとは?
睡眠時無呼吸症候群(SAS: sleep apnea syndrome、「サス」と読みます)とは、睡眠中に呼吸が浅くなったり、止まったりすることで、身体に様々な悪影響が出る病気です。
2003年の新幹線の居眠り運転事故において、運転士が重症のSASであったことから日本でも有名になりました。
また
・チェルノブイリ原発事故
・スペースシャトル チャレンジャー号爆発事故
などの歴史的な事故においてSASの関与が言われていますし、その他重大な交通事故の多くにSASの関与が疑われています。
また、SASはこれら、日中の眠気などを起こすだけでなく、様々な病気のリスクを高めることがわかっています。
代表的なものとして
・高血圧
・糖尿病
・心臓病(心筋梗塞、心不全、心房細動などの不整脈など)
・脳卒中
・認知症
・大動脈解離
・突然死
などがあります。
つまり、SASは健康にとって極めて大事な病態です。
推測では、日本人のSAS患者は、治療が必要な中等度以上の人だけでも300~400万人はいると言われていますが、きちんと診断・治療を受けている方はほんの一部と思われます。
OSAS
SASにも様々なものがありますが、最も頻度が高く、かつ重要なのが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS: obstructive sleep apnea syndrome)です。
OSAS発症の3大要因は、
①肥満 ②男性 ③加齢 です。
つまり、中高年以上の肥満男性はOSASを起こす危険性が高いと言えます。
しかし、日本人では肥満のないOSASが多いことがわかっており、太っていないから安心というわけではありません。
下記のような症状に当てはまる方はOSASを疑うことが大事です
・朝すっきり起きられない(だるい、頭痛がするなど)
・昼間の眠気、集中力低下
・元気が出ない(抑うつ状態)
・いびきをよく指摘される
・夜間頻回に目が覚める、夜間頻尿、就寝中に息苦しくなる
また、OSASは高血圧患者さんに多いことがわかっており、特に薬を飲んでもなかなか血圧が下がらない(治療抵抗性)高血圧の方は要注意です。
SASが健康に与える影響
SASは様々な面で身体に負担を与えますが、その代表が無呼吸による「低酸素」です。
「寝ながら首を絞められている」ようなものなので、身体はリラックスできません(交感神経の機能亢進)。ストレス状態が続くと、血圧・血糖は上がり、慢性的な炎症なども合わさって動脈硬化が進み、心臓病、脳卒中などのリスクが高まります。
また、低酸素は癌のリスクを高めるとも言われています。
下は、睡眠中の低呼吸、無呼吸発作時に血圧が急上昇する様子を捉えた報告です。
(Kario K, Prog Cardiovasc Dis 2016; 59: 262-281.より引用)
(Hypopnea:低呼吸、Apnea:無呼吸)
低呼吸、無呼吸がある程度持続したところで低酸素となり血圧が急上昇していることがわかります。寝てはいても、自律神経や身体は休めていません。
SASの方は、睡眠中にこのような血圧の急激な変動が一晩中起こっており、身体ははダメージを受け続けるのです。
診断
まずは、疑うことが重要です。
上に挙げたようなSASを疑う項目に当てはまる方は、一度医師に相談することを勧めます。
ただし、検査が可能な医療機関は限られています。
こちらから検索できます。
全国の医療機関一覧|睡眠時無呼吸なおそう.com – 睡眠時無呼吸症候群のポータルサイト
治療
その方の病態、重症度に合った治療法が選択されます。
代表的な治療としては、以下のようなものがあります。
・マウスピースなどの口腔内装置
・nasal CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸)
・扁桃摘出術(扁桃肥大が原因の場合)
まとめ
OSASはありふれた疾患であり、健康状態や日常生活のパフォーマンスに極めて大きな影響を及ぼすため、その存在を知り、適切な診断・治療を受けることは重要です。
SASについて、もっと詳しく知りたい方はこちらもご参照ください
医療機器メーカー 帝人のサイトで、わかりやすくまとまっています