胃がん健診:胃カメラかバリウムか? ~医師は胃透視を受けない

  • 胃がん検診には胃カメラか、胃透視(バリウム検査)か

医師は胃透視(バリウム検査)を受けません。

少なくとも私の周りで「胃透視を受けた」という医師は見たことも聞いたこともありません。

 

胃がんがあるかどうかは、胃カメラで調べるからです。

胃透視では、早期胃がんはわからない(見逃す)ことがあります。

また、胃透視で異常があった際は精密検査を受けるように紹介状を渡され、結局その後胃カメラを受けることになります。

 

なので、胃がん検診のために胃透視を受ける医師はいないようです(もしいたらすみません)。

医療機関へのアクセスがいい、胃カメラへの抵抗感が少ないなど医師独自の要因もあるかもしれません。

 

また、これまでの胃がん検診ガイドラインでは、胃カメラによる検診は根拠がないとして推奨されていませんでしたが、最近韓国から、“胃カメラ検診による胃がん死亡率減少”(文献:Gastroenterology 2017; 152: 1319-1328)の報告があり、胃透視(バリウム)に加え、胃カメラも推奨されることになりました。

 

自治体によっては、一般住民を対象とした胃がん検診を胃カメラで行っているところも既にあり、今後は胃がん検診として胃カメラが主流になっていくのではないかと考えています。

 

 

 

  • どうやって、どこで胃カメラを受けるか

検診に保険は使えませんが、症状があれば保険診療で胃カメラを受けられます

診察の場面で、「症状は何もないですが、胃がんがあるか調べたいので胃カメラを受けたい」と言われると、医師のほうでも、堂々と保険診療では検査はしにくいのですが、

「最近少し胃もたれがするので、胃カメラを受けたい」と言えば、検査を受けられると思います。

症状は何でもいいのです。胃もたれ、胸焼け、食欲がない、など。

 

また、検査を受ける場所として、総合病院がいいか、クリニック(開業医)がいいかは、単純には言えませんが、

総合病院のいいところとしては、

・複数の医師の目があるので見落としは少ない

・もし異常があった場合、継続して同じ病院で治療まで受けられる可能性が高い

・もし検査に伴う合併症が起きても対処が可能

などがあり、デメリットとしては、

・待ち時間が長い可能性がある

・まだ熟練していない研修医や若手医師による検査になる可能性がある

・経鼻(鼻から)内視鏡はしていないところがある

といったところでしょうか。

 

クリニックで受ける場合のメリットとして、

・一般に熟練した医師による検査が受けられる

・土日も検査が受けられるクリニックも多い

・経鼻内視鏡も実施しているところが多い

などが挙げられます。

 

異常があった場合や合併症が起きた場合は総合病院へ紹介になる可能性がありますが、個人的にはまずはクリニックでの検査をお勧めします。

 

 

  • ピロリ菌について

 日本人の胃がんの原因の99%以上は、ピロリ菌(Helicobacter pylori)の感染が原因です。

(文献:Helicobacter 2011; 16: 415-419.)

つまり、特殊な場合を除いて、ピロリ菌がいない人には、胃がんはほとんどできません。

ピロリ菌に感染しているかどうか(慢性胃炎があるかどうか)は、胃カメラで胃粘膜をみるとおおまかにわかります。

 

私自身は、以前に胃カメラを受けてピロリ菌がいないことを確認しているので、もう10年以上は胃カメラを受けていません。ほとんど胃がんにかかることはないとわかっているからです。

逆に、ピロリ菌の感染による長年の慢性胃炎の結果、胃粘膜が「萎縮」してしまっている場合、将来的な胃がんのリスクが出てきます。

 

胃粘膜の萎縮がある方は、定期的な胃カメラをお勧めします。

何年毎に受ければいいのか、はっきりとした推奨はありませんが、萎縮が高度な方では1年に1回受ければ安心ではないかと思います。

 

 

参考資料

・Gastroenterology 2017; 152: 1319-1328

・Helicobacter 2011; 16: 415-419.

・日経Gooday 30+ 「胃の一生はピロリ菌に感染しているかどうかで決まる 胃がん・胃潰瘍、除菌でほぼ防げる時代に」(https://style.nikkei.com/article/DGXMZO83942860U5A300C1000000